不動産の売却・購入・賃貸とアスベスト調査
執筆・編集:石綿チェック運営事務局更新日:
結論
国土交通省のアスベスト対策Q&Aは、アスベストの使用が不明なままだと、不動産取引では通常アスベストがあるものとして評価され、建物の資産価値を下げることになると説明しています。売却や賃貸を考える所有者は、図面・改修記録・過去の調査結果を早めにそろえ、必要に応じて調査しておくと、買い手の減額交渉に根拠をもって対応できます。
調査の有無が価格に影響する理由
国土交通省のQ&Aによると、不動産取引では、アスベスト含有建材がある場合、その除去費用分が資産価値から減額されます。調査がされておらず存在が分からない場合は、建設年代などから「あり」として厳しく減額されるか、買い手が環境デュー・ディリジェンスの一環として専門家に調査を依頼し、減額交渉をしてくることが一般的になっているとされています。
情報が不十分なときは、買い手は「最悪のシナリオ」で対策費を見積もるため、売り手が望むより大きな減額になりやすいとも説明されています。一方で、きちんとした調査・改修の記録と計画は、不当な減額交渉に対抗する材料になります。
取引で調査結果が必要になる4つの場面
- 不動産鑑定評価:鑑定評価で確認する事項に「アスベスト等の有害物質」が含まれています。
- 投資用不動産や企業買収のデュー・ディリジェンス:建物環境のリスク評価の項目として、アスベスト含有建材の有無を示す必要があります。
- 売買などの際の重要事項説明(宅地建物取引業法):アスベスト調査の結果がある場合は、その内容を説明する必要があります。
- 住宅性能表示(既存住宅):空気環境の項目で、アスベスト含有建材の有無を示す必要があります。
建物を貸している所有者が対応すること
同じQ&Aは、建物を長く貸し続ける所有者が維持管理で対応すべき事項として、資産除去債務の評価(企業会計基準)、建築基準法の定期調査報告、民法717条の土地工作物責任、石綿障害予防規則による共用スペースの飛散防止対策を挙げています。二つ以上のテナントが入ったビルの共用スペースにある石綿への対策は、建物所有者の義務になります。
テナントが入ったまま除去工事をする場合は、テナントへのばく露のリスクが非常に高くなるため、専門家に十分相談するよう注意されています。
以前の調査結果を使うときの注意
国土交通省のQ&Aは、日常の維持管理の中で行った調査の結果は、解体時の事前調査に活用できるとしています。ただし、2008年2月6日の厚生労働省通達で、それまで主な対象だったクロシドライト、アモサイト、クリソタイルの3種に加え、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトを含む6種の調査が徹底されました。それ以前に3種だけを対象にした分析で「含有なし」とされた材料は、残りの3種の追加分析が必要になります。
売却・賃貸の前に集める資料
- 1竣工図、特記仕様書、仕上表など、使われた材料が分かる図面
- 2改修・模様替えの履歴と、そのときの見積書・報告書
- 3過去の調査報告書と分析結果(調査日、範囲、試料ID、分析した石綿の種類)
- 4吹付け材がある場合は、除去・封じ込め・囲い込みの対策履歴と劣化状況の記録
- 5テナントや管理会社への説明の記録
売却・賃貸の前に確認する記録
- 過去の分析が6種の石綿を対象にしているか(2008年2月以前は3種のみの場合がある)
- 吹付け材の有無と、除去・封じ込め・囲い込みの履歴
- 調査の対象範囲と、調べていない場所
- テナント・管理会社への説明の記録
注意点
- 取引条件や減額の幅は物件と当事者の交渉で決まり、このページは価格や契約内容を判断するものではありません。
具体例
1980年代に建てた賃貸ビルの売却を考える場合、竣工図と過去の改修記録、以前の調査報告書を集め、分析が6種の石綿を対象にしているか、吹付け材の対策履歴が残っているかを確認してから、仲介会社と調査の要否を相談します。
よくある質問
アスベスト調査をしていない建物は売却で不利になりますか?
国土交通省は、使用が不明なままだと通常はアスベストがあるものと評価され、資産価値を下げることになると説明しています。調査や改修の記録は減額交渉への根拠になります。
重要事項説明のためにアスベスト調査をしなければなりませんか?
宅地建物取引業法では、アスベスト調査の結果がある場合にその内容を説明します。調査自体の要否は取引の条件と当事者の判断によるため、仲介会社に確認してください。
昔の調査で含有なしなら、その結果を使えますか?
維持管理のための調査結果は活用できますが、2008年2月以前に3種の石綿だけを分析して含有なしとした材料は、残り3種の追加分析が必要とされています。
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